Slide_Sony_Atsugi_Tech_2020_07_10_Slide081_to_090.html
by Yoshiaki Daimon Hagiwara
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Slide081
イメージセンサの開発背景 1975~1978
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ソニーが他社を抜いて1980年初頭にCCDイメージセンサー搭載の
ビデオカメラを商品化できたのにはそれなりに理由があります。
まず、ソニーの経営陣のサポート、特に当時のソニー社長であった、
の故岩間和夫氏の熱意のたまものです。
1978年、世界発 one chip の CCD video cameraを、
岩間社長が東京で、盛田会長がNew Yorkで同時発表しました。
当日の撮像管のビデオカメラはおろか、感度と雑音の面で、
当時の MOS video camera を 大きく引き離していました。
当時他社で採用されていた、人間の網膜に相当する受光素子構造、
すなわち、絵素構造は、従来の SiO2/N/P 構造でした。
この SiO2/N/P 構造では、受光界面が SiO2/N層の境界面となり、
その境界面は複雑な原子構造の不連続・断層構造が続き、不完全
結晶構造となり、雑音や暗電流の源となる問題がありました。
それで、ソニーは、 新たに、SiO2/P/N/P 構造の受光構造を提案
し、その N層を受光膜とした受光素子構造(絵素)を採用しました。
この新しく提案された P/N/P 構造では、受光部分の N層は、
表面の酸化膜(SiO2)層と半導体(P層)の境界からは、奥深く、
遠ざけられることになります。その境界面の複雑な原子構造の
不連続・断層構造から、受光層の N層を守ることができました。
かつ、当時すでに周知の埋め込み型CCD構造 M/SiO2/N/P 構造の
N層と同様に、SiO2/P/N/P 構造のN層を dynamic に完全空乏化して
動作させ、受光部の残像を完全になくすことができるというアイデア
でした。なかなか難しい動作原理ですが、その動作の結果は、カメラ
の超高感度・残像なしという超高性能カメラの実現を示唆する結果と
なりました。
その技術が現在のすべてのイメージセンサーの受光構造として現在、
受け継がれています。SiO2/P+/N/P 構造の界面のP+層の中には、
主電荷キャリアである+電荷のholeが多数集結して存在する事から、
その状態をイメージして、+キャリア(hole)が集結(accumulate)した
diode 構造という意味で、商標登録され、HADセンサー構造と
呼ばれるようになりました。そして最終的にさらにSiO2/P+/N/P/N
構造とすることにより、より構造的には複雑ですが、それが実用化
され、さらに超高性能・超感度のイメージセンサーが実現しました。
●しかし、1978年に発表された当時のビデオカメラはまだまだ不完全で
問題が山ずみでした。
まず、570H x 498V の、画素数の少ない、 One-Chip FT CCD 型の
Color Imagerというものでしたが、このFTとは frame transfer 型の
scan構造をした CCD imagerの略で、その最大の欠点は、信号転送部にも
常時光が照射されることでした。
強い光の点が入ると、それを縦に明るく白く線を引くことになり、
画像の劣化は著しいものでした。
かつ、実際の青感度を支える、1つの絵素の面積に占める受光面積も、
その実効受光窓が小さく、感度が不十分でした。
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Slide082
イメージセンサの開発背景 1980年
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●しかし、この試作品から2年後、1980年にはソニーから2チップ構成の
カメラが商品化され、全日空ジャンボ機に離着時の模様を機内スクリーン
に映すことに成功しています。
この時のCCDの撮像方式は、 1978年の試作方式で、smear が多かった
frame transferの scan 方式 のCCDイメジャーではなく、さらに
複雑な scan 構造をした interline方式と言われる scan 方式の
CCD imagerでした。
当初、まだ、受光部には透明電極を採用していました。
最終的には現在では、1978年に採用していた SiO2/P/N/P 構造、
すなわち HAD センサー構造となっています。
当時、ソニー国分工場でCCDイメジャーの量産が始まり、
私も、そのCCDイメジャーの開発設計者の1人として
当時従事していて、よく羽田空港と鹿児島空港を生産
立ち上げの為、出張で往復していましたが、その時に、
乗った全日空ジャンボ機の中で離着時の模様を機内の
スクリーンで見かけては、目を大きくしていました。
しかし、このinterline方式でも、
実際の青感度を支える、1つの絵素の面積に占める受光面積は、
その実効受光窓が小さく、まだまだ、感度が不十分でした。
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MOS transistor の商品化は 1970年代に 4 bit マイコンを
商品化した米国 intel社に始まりましたが、1980年代には 8 bitの
マイコンが商品化され、1990年代にはさらに 16 bit プロセッサーが
登場し、Windows95 をOSとしてパソコンが市場を独占し始めました。
2000年には 32 bitの、2010年には 64 bitのパソコンが登場しましたが、
2020年には 128 bitのパソコンが登場することでしょう。
それに刺激され、ますます、CMOS半導体技術の微細化技術がさらに
進み、微細化が進むにつれ、CMOS transistorの性能がさらに向上し、
CMOS imager の性能も向上していくことでしょう。
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Slide083
イメージセンサ の市場動向の推移 2009~2016
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CMOSイメージセンサ(CIS:CMOS Image Sensor)
の産業は、急速に変化しています。
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携帯電話機市場と自動車市場にけん引されて、CIS市場は2014年から
2020年の間に年平均成長率(CAGR)10.6%で成長し、2020年までに
162億ドルの規模になると見込まれます。
大きなビジネスチャンスが出現した応用分野は、自動車と医療機器、
そして監視カメラといったところです。安全性を高める用途だけでなく、
イメージングを「自動化」する用途に使われるためです。
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Slide084 CMOS image sensor の製造企業
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設計・製造技術の進化が CMOSイメージセンサの性能向上を推し進め、
それにより CIS の応用事例にも 変化が生じています。
スマートフォン が 小型カメラに取って代わり、そして アクション
カメラ がビデオカメラに取って代わろうとしています。
ソニーと韓国Samsung Electronics社、そして米国 OmniVision
Technologies社の3社の市場占有率は2016年には合計で 78% に
達しています。そのうち、ソニーが45%、韓国Samsung Electronics社
が21%、米国 OmniVision Technologies社が 12% です。
最近のコロナ問題で製造業の環境が急変し実態が見えませんが??
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Slide085
イメージセンサ の基本構造
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イメージセンサーには、レンズと受光面との間に信号処理回路の層がある
従来型の 表面(front)照射型と、レンズのすぐそばに受光面があり、
信号処理回路の層がレンズから一番遠い位置にある、裏面(back)照射型が
あります。
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Slide086
イメージセンサ の動作原理
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イメージセンサーの chip 構成は、
まず、イメージセンサーの chip1枚から、
ADC ( A/D converter回路 )の chipとの
2枚張り合わせ構成になり、さらに、その下に、
3枚目の processor chip が重なり、さらに、
その下に、memory chip が多層に重なる構造に
進化している。
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Image Sensorの機能は大きく分けて、
(1)Photodiode 、すなわち、光を電気信号に変換する
超感度低雑音の受光素子構造、 と、
(2)電荷転送部(CTD=Charge Transfer Device) 、すなわち、
信号電荷を受光素子部の信号蓄積部から、
信号処理する中央処理システム(大脳)に送る
基本部品で構成されます。
電荷転送装置(CTD)として、1980年~1990年代には
CCDが Super Star でしたが、2000年以後は、
In-pixel Active Source Follow Current Amplifier Circuit 内臓の
CMOS 型の電荷転送装置(CTD)
が主流となり、CCDは、もはや、固体撮像装置には
不要な存在となりました。
超感度で低雑音の受光素子構造としてはCCDは
欠点だらけであることを明示しています。
萩原は、CMOS プロセス技術の微細化について、
学生時代から、萩原の大学の先輩で Intel社の創設者
でる、 Dr. Gordon Moore と、その同窓生の友人である、
Prof. C.A. Mead (萩原のPhD論文の指導官)から、いやと
いう程、教え込まれていました。CCDが、メモリー素子
として全く役に立たないことも、将来、CMOS技術の
微細化が進めば、必ず、CMOSが勝つことも、予想されて
いたことでした。
そこで、萩原は、1975年、このCCDの欠点を補うために、
SONY original HAD sensor を考案しました。
1984年にやっと自社開発に成功しました。その量産技術を
世界に先駆けて確立しイメージセンサー市場を独占制覇に
成功しました。一方、その量産技術確立に失敗しイメージ
センサー市場参入をNECはあきらめました。この時点で、
SONYのイメージセンサー市場での独走が確実となりました。
SONY original HAD sensor 構造を実現するには、CCDの
主要技術のMOSプロセス技術だけでなくHAD sensor 構造が、
P+NPNsub接合のサイリスタ―構造であることから、 Bipolar
Transistorのプロセス量産技術も不可欠でした。SONYは運よく、
世界で最初にBipolar Transistorのプロセス量産技術を確立し、
世界の小型トランジスタ・ラジオの市場を制覇した歴史が
ありました。その経験が生かされて、はじめて、SONY
original HAD sensor 構造を採用した、世界発の超感度超低雑音
の Image Sensor の開発量産化に、1984年やっと、SONYは
成功しました。
その道取りはきびしく、SONY社内でも、初期のHADsenso
の開発にひるみ、安易な構造であった透明電極で横型OFD型
を主流とする方針が選択されていました。また、その構造で、
ANA全日納入実績があり、ジャンボ機への搭載実績もありました
あることに成功していると、なかなかそれにこだわり、なかなか、
新しいことに挑戦できないのが、人間の心情でした。しかし
それでも、開発部隊から離れて、ただ無力にも、萩原が見守る中、
萩原が教育し指導してきた、若いSONYの開発技術者仲間たちの手で
SONYの半導体TOPを説得し続け、1984年には、世界で初めて、
SONY original HAD sensor の開発・量産技術が確立しました。
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Slide087
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Slide088
イメージセンサの動作原理
光は波でもあり、また粒子(光子)でもある (Albert Einstein 1900)
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まず、原子構造、すなわち、原子核と電子の様子と、
太陽系、すなわち、太陽と惑星の類似の話から始めます。
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●軌道電子の物理モデルは地球や火星などの軌道惑星に類似します。
●たとえば、ヘリウム原子の場合、ヘリウム原子の中の
2つの電子のSPIN(自転)は、ヘリコプターの
2つの羽、お互いに反対の回転(SPIN構造)をとり、
回転もモーメントの和がゼロとなり安定している状態に
類似します。
●太陽は水素原子(陽子1個+中性子1個+電子1個)が二つ核融合により
結合し、ヘリウム原子(陽子2個+中性子2個+2個)を生成する時に出る
余分な核融合エネルギーが光となり放出されます。その時に中性にならない
α線((陽子2個+中性子2個)という+2の宇宙線を放出する時があります。
この時に同時に高エネルギーのβ線(高エネルギー電子)も放出します。
また人間には害になる放射線、γ線(高エネルギーの光子、光の粒子)も放出します。
●アルミ原子の中にある軌道電子の物理モデルから、
金属の物理モデルが生まれる。すなわち、金属を
「器に入った水モデル」にたとえます。
器に入った水は、太陽光を浴びるといずれ温かくなり
熱を吸収し、水の分子が元気になり、蒸発して、器の
外に飛び出し、器の水が空になります。同様に、金属
に光を照射すると、金属の中の電子が、光を吸収して
元気に動き回り、元気あまった電子は、金属から飛び
出すことがあります。
その状態は、地球の引力圏からロケットが宇宙の自由
空間に飛び出す脱出エネルギーに対応します。金属の
器のふちの高さが、脱出エネルギーに対応し、その
エネルギーの大きさは、半導体の禁制帯(Energy Gap)
に対応します。半導体物理にはいつも付き物で、なか
な直感的に理解が苦しむ禁制帯(Energy Gap)の基本
概念となります。
金属原子核の引力圏の脱出エネルギーはあまり大きく
ありません。しかし、半導体物質の母体となる Silicon
原子となると、そのSilicon原子核の引力圏から軌道電子
が脱出するエネルギーの大きさは 約 1.1 eV になります。
さらにそれが SiO2 などの絶縁体となると 4~5 eV
ともなり、なかなか、このエネルギーを個体の中では
電子は持つことができず、絶縁体は文字通り、電気を
通さない物質であることになります。
電子が光からエネルギーをもらうと、光のエネルギー
が減少します。光も電子と同様に粒子と見なすと、
玉突きと同じ古典物理モデルの数学ベクトル演算で
記述が可能となり、反射光の角度と波長の関係から
電子の質量が求まることになります。
また、光の粒のエネルギーは波長に反比例することも
確認することができます。
世にいう、光電効果と言うものです。
それを最初に提唱したので Albert Einsteinです。
彼は相対性理論で有名ですが、まだ当時、相対性理論
は難しく一般に理解されておらず、この光電効果で、
彼はノーベル賞を受賞することになります。
Compton波長(光子)と電子が光からエネルギーを
吸収する様子は 今では常識ですが、当時にとっては
大発見でした。
目から入った光のエネルギーが、網膜細胞の中の電子が
吸収して電子が元気になり、それが刺激信号となり、
神経線を通って脳細胞が刺激されて人間はものを見る
ことができるということですが、今では常識ですが、
当時にとっては大発見でした。
同様に人間が造るイメージセンサー構造でも、レンズから
入った光のエネルギーが、受光絵素構造、すなわち、
SiO2/P+/N-/P/N 構造の N-層に電子が励起し蓄積され
それを MOS memory の scan 方式で 外部出力端子に
時系列に2次元配列の絵素情報が一次元時間軸に配列され
て外部に転送されということに現在つながっているのです。
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血液にもいろいろなタイプがあります。
物質にもいろいろなタイプがあります。
金属とは?
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Slide089
金属(鏡)は光を反射する。光を通さない。
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鏡の断面構造
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鏡はどうして光を反射するのでしょうか?
まず鏡の断面構造の説明から始めます。
典型的な鏡は、片面は、絶縁体である SiO2などの
ガラス層が約 5 mm ほどの厚さで保護されています。
このガラス層は光を通します。SiO2の原子に含まれる
電子はしっかりと強い原子核の引力に縛られて原子核
の軌道から飛び出すことができません。光は結果的に
電子にエネルギーを奪われることなくガラスの様な
絶縁体を通過していきます。しかし、鏡にはこのガラス
の絶縁体の下に 80 nm ぐらいの銀メッキ膜と 40 nm
ぐらいの厚さ銅メッキ膜が施されています。その下には
下からの光を吸収し上部に通過しない様にした光吸収体
を含んだ塗装幕が 50 um ほど塗った構造となっています。
鏡の表面で、光の粒、光子(すなわちエネルギーの粒)が
銀メッキ膜の中の銀の原子核の中にあるたくさんある軌道
電子とぶつかり、光の粒のほとんどが玉突きボールの様に
はね返され、鏡の表面で反射して出ていきます、それで
私たちは鏡で自分の姿を見ることが可能となります。
金属は光を反射します。光を通さないということになります。
鏡がそのいい例です。
金属(銀)には自由電子( e- )が多数存在します。
銀の原子の中の電子(e-)と衝突して光子が跳ね返る
ことになります。
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電荷を運ぶ粒子には2種類ある。
原子構造(原子核と電子)と太陽系(太陽と惑星)の類似
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N型とP型の半導体の性質について
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●ガラスの様な絶縁体にはガラスの中の原子の間をふらふらと
移動できる自由電子は存在しません。
●またシリコン原子の結晶体のような半導体の物質では、
普通抵抗値がかなり大きく電気をあまり通さず、
シリコン原子の結晶体の様な、通常の半導体の結晶体は、
通常絶縁体に近い、電流を通さない高抵抗状態にあります。
●しかし、N型とかP型とか呼ばれる半導体結晶となると、
話は変わります。つまり、電流を通さない高抵抗状態から、
その抵抗値を人間が自由に調整できる物質になります。
たとえば、シリコン結晶体に、V groupの原子のを不純物原子
として添加するとN型の半導体物質となります。電流を通す
電荷キャリアはマイナス(negative)の電荷を持った電子です。
V groupの原子 --> N(7), P(15),As(33),Sb(51),Bi(83)
●そこで、まず、N型半導体というものの性質について説明します。
これには、第4族の原子と 第5族のの原子が関係します。
IV groupの原子 --> C(6), Si(14),Ge(32),Sn(50),Pb(82)
V groupの原子 --> N(7), P(15),As(33),Sb(51),Bi(83)
たくさんある第4族の原子の原子の中に、第5族の原子を少々
加えると、第5族の原子は電子が1個余分にあるような形になり
まわりの第4族の原子の影響を受け、不安定となり、第5族の
原子から電子が1個飛び出し、それが自由電子となり、第4族
の原子の結晶体の中をふらふらと浮遊します。
たとえば、シリコン(原子番号 14 )の結晶体に造る時にシリコンより
原子番号が1つ大きい リン(原子番号 15) や、リンと同じ第5族の
ヒ素原子 As(33) を不純物原子として少々添加して結晶成長させると、
N型半導体という物質になります。
リン原子やヒ素原子の一番外の軌道にある電子が、原子核から飛び出して
自由電子となり、シリコン結晶体の中をふらふらと浮遊し始めます。
その様子は、空っぽの箱の中に玉が1つ自由にころがっている様子に
対応します。
この自由電子の動きが、電荷の流れとなり、シリコン半導体の中で
電流が流れはじめることにつながります。実効的にシリコン結晶体の
抵抗値を下げて、電流が流れやすい状態を作ることになります。
このタイプの半導体を慣例で N型半導体と言います。語源の歴史的
な由来は PやAs原子は余分な電子を1つ供給するもの(donor)として
働くことになり、donorという文字の中の n を もじってN型半導体
としたのが歴史的な由来です。
しかし、もっと理解しやすい方法は、この場合の電流のもととなるのは、
この場合、電子で マイナスの電荷 (negative charge) を持つので、
negativeの頭を取って、N型半導体とする方法です。
●次に、P型半導体というものの性質について説明します。
これには、第3族の原子と 第4族のの原子が関係します。
III groupの原子 --> B(5), Al(13),Ga(31),In(49),Ti(81)
IV groupの原子 --> C(6), Si(14),Ge(32),Sn(50),Pb(82)
たくさんある第4族の原子の原子の中に、第3族の原子を少々
加えると、第3族の原子は電子が1個不足しているような形になり
まわりの第4族の原子から電子を1個盗み取り、第4族の原子の
ふりをし安心します。しかし、電子を1個盗まれた、第4族の原子
は、もともとは中性でしたが、負の電荷を持った電子が1個盗まれて
電子1個ぶんの電荷が不足し、その結果、正の電荷 ( Positive
Charge) を帯びた原子、つまり+イオン原子となります。これが
P型の半導体となります。また、電子1個不足したこの+イオン原子
のまわりにはたくさんの中性の第4族の原子があり、その中性の第4族
の原子からいつでも自由に電子を1個盗んで中性に戻ります。結果的に
+イオン原子の状態、軌道電子が1個不足し、穴(hole)があいた状態が
自由に第4族の原子の結晶体の中をふらふらと浮遊することになります。
これがP型半導体というものです。電荷を運ぶキャリアはP(プラス)の
第4族の原子です。
たとえば、シリコン(原子番号 14 )の結晶体に造る時にシリコンより
原子番号が1つ少ない アルミ(原子番号 13) や、アルミと同じ第3族
のボロン原子 B(5) を不純物原子として少々添加して結晶成長させると、
P型半導体という物質になります。
第3族原子のアルミ原子やボロン原子は、第4族原子のシリコン原子から
軌道電子を盗み、+イオン原子の状態(hole)となり、結果的にシリコン
結晶体の中をふらふらと浮遊し始めます。
その様子は、玉がぎっしりつまった箱の中に、1個だけ玉がなく、穴(hole)
があいた状態となり、その穴(hole)が、玉がぎっしりつまった箱の中を自由
に浮遊している様子に対応します。
この穴(hole)、つまり+に帯電したイオン原子の動きが、電荷の流れとなり、
シリコン半導体の中で電流が流れはじめることにつながります。この場合も
実効的にシリコン結晶体の抵抗値を下げて、電流が流れやすい状態を作ること
になります。
このタイプの半導体を慣例で P型半導体と言います。語源の歴史的な由来は
ボロンやアルミ原子は余分な電子を1つ受け取るもの(acceptor)として働く
ことになり、acceptor という文字の中の p を もじっPN型半導体とした
のが歴史的な由来です。(かなりのこじつけ?)
しかし、もっと理解しやすい方法は、この場合の電流のもととなるのは、
この場合、プラスの電荷 (positive charge) を持つイオン、つまり
シリコンの荷電原子ということで、その positiveの頭を取って、P型の
半導体とする方法です。
結論として、
N型半導体では negative charge (電子)が電流を通す。
P型半導体では positive charge (hole)が電流を通す。
ということになります。
すべてその性質は原子構造に由来するものです。
III groupの原子 --> B(5), Al(13),Ga(31),In(49),Ti(81)
IV groupの原子 --> C(6), Si(14),Ge(32),Sn(50),Pb(82)
V groupの原子 --> N(7), P(15),As(33),Sb(51),Bi(83)
VI groupの原子 --> O(8), S(16),Se(34),Te(52),Po(84)
●金属の物理モデルは、「水が入った器」モデルでした。
実際には、常温では水面近くには、水の粒(分子)が水蒸気として少々
存在します。そして、水の中から飛び出した水の粒(分子)の後には、
瞬間的には空洞(hole)が生まれます。これが大きくなると水の泡に
なります。「水が入った器」に光を照射し温めると、どんどん水は熱く
なり、沸騰しはじめ、たくさんの水蒸気や泡が発生します。
●波長が短い程、光の粒(光子)の持つエネルギーは大きい。
金属に波長の短い光(大きなエネルギーを持つ光子)を照射すると
電子が飛び出すのを発見しました。
しかし波長の長い光をいくら強く照射しても、つまり光の量を増やしても、
電子は金属から飛び出しません。
波長の長い光では、金属原子から飛び出すために必要な脱出エネルギー
がまだ足りないからです。
十分脱出エネルギーを手にした自由電子は、空間を自由に浮遊し移動します。
しかも結晶体の中で、結晶体の原子核の引力圏の外では、自由に浮遊します。
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